2017年05月05日

ちょっと今から仕事やめてくる(北川恵海)

ブラック企業などが話題になっていますが、そんな職場で働き、疲弊する若者を描いた小説。
「神様から一言」に似たものを感じますが、こちらの方が、より現実に則しているように思います。
最後は泣けました。





印象に残った個所を引用
P208
「でも、そんな僕でもひとつだけ変えられるものがあります。それが、自分の人生なんです。そして、自分の人生を変えることは、もしかしたら、周りの大切な誰かの人生を変えることに繋がるのかもしれない。そう気づかせてくれた人がいるんです。友達がいるんです。両親が心配してくれているんです。まだ今は自分が何をしたいのかも、何ができるのかもわかりません。でも、何をしていてもいい。ただ、笑って、したいことをして生きていきます。自分に嘘をつかないように、生きていきます。両親を大切にして生きていきます。それだけで、いいんです。今の僕にはそれが全てなんです」 全て話し終わると、身体を深く折り曲げ、お辞儀をした。
「今まで、お世話になりました」ポカーンとしている者、呆れた表情の者、そして、確かに何かを感じてくれている者。様々な瞳に見つめられ、俺はニッコリ微笑んだ。


P219
ポケットの中には、あの日の小さなメモ用紙が入っている。
『人生って、それほど悪いもんじゃないだろ?』

<blog内関連記事>
To Be Freedom@読書三昧: 神様からひと言(荻原 浩) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/435477272.html
To Be Freedom@読書三昧: 僕は明日もお客さまに会いに行く。(川田 修) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/438907508.html
To Be Freedom@読書三昧: 筆談ホステス 67の愛言葉 (青森一の不良娘が銀座の夜にはぐくんだ魔法の話術)(斉藤里恵) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/438907372.html
To Be Freedom@読書三昧: 職場をしあわせにするウブントゥ――アフリカの知恵がもたらす、信頼と感謝のチームワーキング(スティーヴン・C・ランディン (著), ボブ・ネルソン (著), 酒井 泰介 (翻訳)) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/438906660.html
To Be Freedom@読書三昧: 質問です。(名越康文) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/408565893.html
To Be Freedom@読書三昧: ロスジェネの逆襲(池井戸 潤) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/398141016.html
To Be Freedom@読書三昧: 人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則(エドガー・H・シャイン (著), 金井壽宏 (監修), 金井真弓 (翻訳) ) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/376687000.html
To Be Freedom@読書三昧: 限界集落株式会社(黒野 伸一) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/358378853.html
To Be Freedom@読書三昧: アンガー・マネジメント―アメリカ・エグゼクティブの間で爆発的に普及!イライラ、ムカムカを一瞬で変える技術 http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/257973273.html

人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


posted by わけい at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

火花(又吉 直樹)

お笑いコンビ・ピースの又吉さんの小説。
若手漫才芸人を題材にした作品ですが、芥川賞を受賞して話題になりましたね。





印象に残った個所を引用
「笑われたらあかん、笑わさなあかん。って凄く格好良い言葉やけど、あれ楽屋から洩れたらあかん言葉やったな」と神谷さんが言った。
下北沢の駅で人が沢山降りたが、降車したのと同じくらいの人間がまた乗ってきた。
「あの言葉のせいで、笑われるふりが出来にくくなったやろ?あの人は阿呆なふりしてはるけど、ほんまは賢いんや。なんて、本来は、お客さんが知らんでいいことやん。ほんで、新しい審査の基準が生まれてもうたやろ。なんも考えずにこの人達阿呆やなって笑ってくれてたらよかったのにな。お客さんが、笑かされてる。って自分で気付てづいてもうてんのって、もったいないよな」


世間からすれば、僕達は二流芸人にすらなれなかったかもしれない。だが、もしも「俺の方が面白い」とのたまう人がいるのなら、一度で良いから舞台に上がってみてほしいと思った。「やってみろ」なんて偉そうな気持など微塵もない。世界の景色が一変することを体感してほしいのだ。自分が考えたことで誰も笑わない恐怖を、自分で考えたことで誰かが笑う喜びを経験してほしいのだ。
必要がないことを長い時間をかけてやり続けることは怖いだろう?一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。無駄なことを排除するということは、危険を回避するということだ。臆病でも、勘違いでも、救いようのない馬鹿でもいい、リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。それがわかっただけでもよかった。この長い月日をかけた無謀な挑戦によって、僕は自分の人生を得たのだと思う。

<blog内関連記事>
To Be Freedom@読書三昧: スクラップ・アンド・ビルド(羽田 圭介) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/449612410.html

人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


posted by わけい at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スクラップ・アンド・ビルド(羽田 圭介)

又吉さんの「火花」と同時の芥川賞受賞作品。
祖父の介護を通しての色んなことを考える青春小説。





印象に残った個所を引用
給与に比して仕事のきつい介護業界では、大輔のように四年以上の職歴がある男性の人材は、貴重らしい。そういう人たちは総じて、共働きしてくれる甲斐性のある女と一緒に生活している場合が多く、つまりはモテる男にしか長く務まらない仕事なのだと大輔が以前冗談半分にもらしていた。


柔らかくて甘いおやつという目先の欲望に執着する人だからこそ、目先の苦痛から逃れるため死にたいと願うのだ。


「足も腕も痛くてからねえ」祖父がさする箇所の半分以上は、関節等ではなく筋肉の部分だ。健斗もここのところ、全身のあらゆるところに筋肉痛がある。現役世代の健斗にとって痛みとは炎症や危険を知らせる信号であり、筋肉の痛みに関していえば超回復をともなったさらなる成長の約束そのものである。つまり、後遺症や後々の不具合がないとわかれば苦なく我慢できる。しかし祖父にとっては違う。痛みを痛みとして、それ自体としてしかとらえることができない。不断に痛みの信号を受け続けてしまえば、人間的思考が欠如し、裏を読むこともできなくなるのか。だからこそ痛みを誤魔化すための薬を山のように飲み、薬という毒で本質的に身体を蝕むことも厭わない。心身の健康を保つために必要な運動も、疲労という表面的苦しさのみで忌避してしまう。


つまり健斗が今いくら、W急降下W鍛錬をしても、半世紀も生きれば祖父のような肉体ならびにそれに伴う堕落した精神になってしまう事実を見せつけられているようなのだ。見ているだけで未来の自分を馬鹿にされるようで、だから孫に威厳を示すためにも、祖父にせめて有終の美を飾ってほしいと健斗は思う。


<blog内関連記事>
To Be Freedom@読書三昧: 40代女性マンガ家が訪問介護ヘルパーになったら(吉田 美紀子) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/449612290.html
To Be Freedom@読書三昧: 最後だとわかっていたなら (原題『Tomorrow Never Comes』) http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/277415818.html
To Be Freedom@読書三昧: 「介護入門」。 http://dokusho-kiroku.seesaa.net/article/131232144.html

人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


posted by わけい at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする