2014年05月29日

失敗学のすすめ(畑村 洋太郎)

人間は必ず失敗するものですが、その失敗をその後に活かすか、恥ずかしいと隠してしまうかで、未来は大きく変わります。

人間のあらゆる行動は「種」だという考え方があります。
生えて欲しい種は土の中に埋め、生えて欲しくない種は土や水気の無いところで干からびさせる。
つまり人間の行動も、良いことをしたらその芽がしっかり生えるように隠し、悪いことや失敗をしたらその芽が生えないように人に語って知ってもらう、という考え方です。
失敗学の根本を追求すると、そんなところにたどり着くような気がします。

いずれにせよ、できる限り「ヒヤリ・ハット」にたくさん気付き、その段階で対策を講じていきたいものですね。

失敗学のすすめ (講談社文庫)



目次
プロローグ 失敗に学ぶ
第1章 失敗とは何か
第2章 失敗の種類と特徴
第3章 失敗情報の伝わり方・伝え方
第4章 全体を理解する
第5章 失敗こそが創造を生む
第6章 失敗を立体的にとらえる
第7章 致命的な失敗をなくす
第8章 失敗を生かすシステムづくり
エピローグ 失敗を肯定しよう

印象に残った部分を引用。

P18
失敗を隠すことによって起きるのは、次の失敗、さらに大きな失敗という、より大きなマイナスの結果でしかありません。失敗から目を背けるあまり、結果として、「まさか」という致命的な事故がくり返し起こっているのだとすれば、失敗に対するこの見方そのものを変えていく必要があります。
(中略)
忌み嫌うだけのいままでの方法には限界があることは、最近になって相次いで起こっている事故を見れば明らかです。そこから一歩進んで、失敗と上手につき合っていくことが、いまの時代では必要とされているのです。


P20
大切なのは失敗の法則性を理解し、失敗の要因を知り、失敗が本当に致命的なものになる前に、未然に防止する術を覚えることです。これをマスターすることが、小さな失敗経験を新たな成長へ導く力にすることになります。
さらに新しいことにチャレンジするとき、人は好むと好まざるとにかかわらず再び失敗を経験するでしょう。そこでもまた、致命的にならないうちに失敗原因を探り、対策を考え、新たな知識を得て対処すれば、必ずや次の段階へと導かれます。そして、単純に見えるこの繰り返しこそが、じつは大きな成長、発展への原動力なのです。
人の営みが続くかぎり、これからも失敗は続くし、事故も起こるでしょう。とすれば、これを単に忌み嫌って避けているのは意味がなく、むしろ失敗と上手につき合う方法を見つけていくべきなのです。


P103
患者にまちがった薬を投与したときなど、病院側の管理体制や看護婦に重労働を強いている構造的問題にはまったく触れず、それこそひとりの看護婦のミスとして問題を収めようとする傾向が見られます。この背景にあるのが、「失敗原因は変わりたがる」という失敗情報も持つ性質なのです。


P106
じつは、「悲劇の◯◯」という言葉の中には、「失敗は神話化しやすい」という失敗情報の持つひとつの性質がよく表れています。「大和」イコール「悲劇の戦艦」というのは、いまや多くの人たちに受け入れられている失敗情報の伝達型式です。神話化した悲劇物語によって、戦艦大和の失敗情報は感情や義侠心に訴えられ、聞き手にとって覚えやすく、理解しやすいものになっています。
しかしながら、神話化がすぎると、情報そのものの本質が見えにくくなります。実際、戦艦大和からついウドの大木を連想する人も多くいますが、戦争のやり方が大艦巨砲の時代だったら立派な戦艦だったのです。しかし時代は航空機を主体とする時代に変わっていったために、あのような悲劇となったのです。この悲劇の真の原因は、戦争のやり方が大艦巨砲の時代から航空機に変わっているという時代認識を持てなかった軍備の立案者の判断不良にあったことを知らなければならないのです。
戦艦大和のように悲劇的な物語性のある失敗情報は、神話化して多くの人に伝わる傾向にありますが、こんなふうについ一面的な見方に偏ってしまいがちで、そのままの形では正しく知識化する上で不都合です。「失敗は神話化しやすい」という性質は、そこから学習する人にとって、決して喜ばしいものではないのです。


P108
組織内の階層間を失敗情報が上下するとき、単なる失敗情報だけでなく、過ちを犯した人への評価も同時に上下します。先ほどと同じように、「これで自分たちの評価が下がる」「自分たちの仕事に不利である」という意識がこのとき働くことは避けられないことで、失敗情報は上にも下にも伝達されることを嫌うのです。


P111
他人の失敗に学び、そこから新しいなにかを生み出そうと考えたときに、まず人が知りたいのは、誰に責任があったかということより、失敗したその人がどんなことを考え、どんな気持ちでいたかという、第一人称で語られる生々しい話です。ときとして、この中には外部の人からはうかがい知ることのできない真の失敗原因が隠されていることもあります。だから当事者に自由な気持ちで失敗を語らせることは、失敗情報を伝える上でたいへん重要なポイントになります。


P203
本来やらなければならないメンテナンスの回数を減らして生産システムをフル稼働させたり、マニュアル化によって作業者の選択肢をせばめて生産効率を挙げたり、人材派遣会社から必要に応じて作業員を提供してもらうことで大幅に人件費を浮かすなどといったことは、どこの企業でもやりがちです。その反対に、失敗をなくすための安全管理などは、むしろ経費が増大するだけなので、「できることならやらずにすませたい」と考えがちだから困りものです。
もちろん企業の大きな目的はあくまで利益をあげることですが、危険を顧みず、大きなリスクを負ってまで目先の利益を追求する姿勢は間違いです。結果として、これが組織にとっても致命的になりかねない多大な損害をあたえるようなことがあるなら、これほどナンセンスなことはありません。


P259
失敗は必ず起こるもので、これを避けることは絶対に不可能です。しかし、どこで起こるかくらいは、全体を理解していれば容易に予測できるのが失敗です。リーダーの心がけひとつで発生率を三分の一に抑えることができるのなら、これを真正面から見据えて失敗と上手につき合っていく姿勢がリーダーには強く求められます。

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posted by わけい at 07:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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