2016年06月12日

人間は料理をする・下: 空気と土(マイケル・ポーラン (著), 野中 香方子 (翻訳))

To Be Freedom@読書三昧: 人間は料理をする・上: 火と水(マイケル・ポーラン (著), 野中 香方子 (翻訳))の下巻です。

人間は料理をする・下: 空気と土




目次
第三部 空気――ある素人パン屋の挑戦 (空気を使う料理[パン]) 第四部 土――発酵の冷たい火(発酵を使う料理[キムチ、チーズ、お酒等])

印象に残った個所を引用。
P8
動物や植物を食べるために人間が考え出した、初期の簡単な調理法一ー例えば肉を焼いたり、煮込んだりすることーーは、個人レベルでできる作業だが、パンを焼くことには文明全体が絡んでくる。まず定住を前提とし、人間、植物、さらには微生物までもが関与する長く複雑なプロセスを経て、ようやくパンは焼きあがるのだ。一塊のパンには、農業、製粉、焼成の文化が関わっており、パン職人だけでなく粉屋や農夫も貢献しているが、それ以外に、特別な生物、つまり、酵母菌や微生物のはたらきが欠かせない。それらのはたらきがあればこそ、草の種を粉にして練った原料からは想像もつかない、ふんわり膨らんだパンがオーブンから出てくるのだ。豚からローストポークやポークシチューを作るのとはそこが違う。微生物が排き出したガスを閉じ込めてできた繊細なスポンジ状の構造は、複雑なシステムの賜物であり、量的にも質的にも部分の総和をはるかに超えたものである。


P170
キリストの奇跡のいくつかに発酵が絡んでいるのはよく知られることだが、彼女も目を輝かせながらそれを指摘したーーチーズは、パンや葡萄酒と同じく、平凡な物質が非凡なものに変化したのであり、そのプロセスは神の存在を暗示しているのだ、と。
「チーズがなぜ聖体[キリストの血と肉葡萄酒とパン]に含まれないのか、理解できません」と彼女は言った。冗談かと思ったが、彼女は真剣だった。聖体にチーズを加えれば、パンと葡萄酒だけではわからないことがわかってくる、と彼女は考えている。「チーズを通じて、人は死に思いを馳せるようになるでしょう。人は皆死ぬという事実に向き合うことは、精神的成長に欠かせないのです」


P202
実のところ、多くの動物が、わたしたちと同じくらいアルコールを好むことがわかっている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の精神薬理学者で『Intoxication:The Universal Drive for Mind-Altering Substances(酩酊ーー精神を変えるものへの普遍的欲求)』を著した、ロナルド・シーゲルによれば、昆虫は発酵した果実や樹液で酔うのが好きで、それは鳥やコウモリも同じであり、かなり危険な状態になるものもいるそうだ。酔っぱらって墜落するものさえいるという。


P203
アルコールへの嗜好を調べる実験では、飲みすぎる動物もいて、時には死に至ることもある。チンパンジーは飲み放題を許されると、一日中、酔っばらっている。しかし、賢明に酒量を抑える動物もいる。例えばラットは、そういう環境に置かれてもたいていは人間と同じような飲み方をする。集まって夕食前のカクテルを飲み、寝る前にも軽く飲む。そして、三、四日ごとに賑やかな飲み会を開く。ひとり酒ではなく、皆で飲むのが決まりのようだ。これはネズミに限った話ではなく、ほかの種も同じで、そこには正当な理由がある。酔っぱらうと無防備になるので、仲間といるほうが安全なのだ。


P248
ビールを醸造し、チーズを作り、パンを焼き、豚の肩肉を煮込むと、それらすべてが単なる製品ではなく、「もの」でもないということが、否応なく了解される。実のところ、市場で売られる製品は、人と人、人とほかの種とのつながりの所産なのだ。産業経済の長くわかりにくい供給の鎖は、わたしたちに自然とのつながりを忘れさせたが、食べることと飲むことはそれを思い出させる。



P257
この作業がもたらす関係の中で最も重要なのはおそらく、進んでそれを作ろうと決めたわたしたちと、できあがったものを食べ、おいしければ喜んでくれる人々との関係である。料理とは「つながること」だということをわたしは学んだ。それも、ほかの種、ほかの時代、ほかのカルチャー(人間のカルチャーと微生物のカルチャー)とつながるだけでなく、最も重要なこととして、ほかの人々とつながることなのだ。料理は人間の寛大さが最も美しい形
で表出したもののひとつである。そして、最高の料理は、愛情の現れでもあるのだ。


P268
「骨付きの豚の肩肉を切ることは、それが大きな哺乳類の肩の筋肉であり、本来の目的は、わたしの腹を満たすことではなかったということを、ありありと思い起こさせる…この取り組みを通じてわたしが学んだ最も重要なことは、料理がわたしたちを社会や生態系ーー動物、植物、土、農夫、身体の内外にいる微生物、そしてもちろん、わたしたちが作った料理を食べて喜ぶ人々ーーと、どのように結びつけているかということだ」


P270
「愛する人のために、おいしくて栄養のあるものを用意することほど、利己的でなく、暖かで、有益な時間の過こし方があるだろうか。さあ、始めよう」
人気ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


posted by わけい at 15:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/438906841

この記事へのトラックバック