2016年11月21日

ヒトと生き物 ひとつながりのいのち 旭山動物園からのメッセージ(日本図書館協会選定図書) (坂東 元)

日本一の来園者数を誇る、旭山動物園の園長さんによるエッセイ。

ヒトと生き物 ひとつながりのいのち 旭山動物園からのメッセージ(日本図書館協会選定図書)




目次
はじめに


【旭山動物園の動物たち1】

■「生きていること」の本質――2007
生き物に飽きる′サ代社会
「鳥インフルエンザ」は人間が生み出した!?
弱いものがいのちを引き継ぐ?
「ダメなものはダメ」のけじめ
「生きていること」の本質
エキノコックス騒動が示したもの
「ナカちゃん」は、なぜ死んだ?
母性のスイッチ≠ェ入るとき
キリギリス捕りにも温暖化の影響!?
「連鎖の輪を断ち切る」という罪
けがの仕方を遊びから学ぶ
人間の干渉のさじ加減

■オランウータンの森が消えていく――2008
レッサーパンダのバランス感覚
オランウータンの森が消えていく
お袋の味≠ェいのちを守る
子別れのタイミング
剥製ではなく、いのちを見せたい
檻越しの共存≠ニいうルール
「オオカミの森」のメッセージ
ペンギンたちの過酷な夏
人間は自然のなかにいない
未来へいのちを引き継ぐ動物園
キリンの「ゲンキ」、初めての越冬
すべてのいのちは循環している

■いのちは必ず死で終わる――2009
自然遺産、みんなで守る仕組みを
オオカミとして生きた「クリス」
氷や雪を頼りに生きるいのち
オランウータン「モモ」の死
いのちは必ず死で終わる
眠っている能力を目覚めさせる
電気柵でエゾシカの道≠確保
想定超えたテナガザルの大ジャンプ
受け継がれた「ザブコ」のいのち
本当のエコ、見極める目を


【旭山動物園の動物たち2】

■エゾシカのいのちの価値は…――2010
動物の目≠ノ映る人類
ホッキョクグマ、新たな血統誕生へ
絶滅危惧種を守るとは…
動物のいのちから授かる力
口蹄疫が問いかけるもの
「今どきの若者は…」と言う前に
野生動物への「恩返しプロジェクト」
ペンギンの幼稚園
絶滅危惧種はヒトの暮らしの鏡
生物保全と遺伝資源
エゾシカのいのちの価値は…

■ヒトだけでは生きられない――2011
生き物との距離感を考える
ホッキョクグマの大移動
本当に必要なものは何か?
ヒグマの「トンコ」が母親に
オオカミはペアで子育て
夏のドキドキいつまでも
ヒトだけでは生きられない
風土に合わせた暮らし方を

■地球は一つのいのち――2012→2014
カバの「ゴン」、四十四年の重み
距離感ゼロ!? レッサーパンダの「栃」
フラミンゴ脱走の波紋 その一
フラミンゴ脱走の波紋 その二
エゾシカ「治夫」の死に思う
つながってこそ、いのち輝く
昆虫食が人類を救う!?
タンチョウのヒナを傷つけた犯人
地球は一つのいのち

あとがき



印象に残った個所を引用
P28
生き物が繁栄することができるのは、「強いものが生き残ってきたから」と考えがちです。強いものは、その環境のなかで、一番エサを確保しやすい場所を縄張りにします。しかし、環境が変化したら……。強いものは、最後の獲物がいなくなるまで、その場に執着して死んでいくでしょう。


P64
「飼育する」ことは、動物たちの生活への干渉を伴います。僕たちはできるだけ、その影響を小さくすること、陰のような存在になることを目指しています。


P94
ヒトの生き方は、それ以外の生き物から見れば、あまりにも異質です。たとえば、ハエを殺して棄ててしまうのは人間だけです。庭の花についているアブラムシを殺虫剤で殺してしまうのも人間だけです。それらのいのちは、自然のなかに全く還元されません。
このことに罪悪感を持つ人は、ほとんどいないでしょう。でも、すべてのいのちが循環することが、自然の摂理に沿って生きるということなのです。
ハエは、スズメの子育てに欠かせない大切な食料です。無数の死があるからこそ、たくさんのいのちが育まれるのです。意味のないいのちや、無駄ないのちは一つもありません。


P98
動物園の動物たちは、決して広いとはいえない環境で一生を過ごします。たとえ、僕たち飼育係が何もしなくても、動物は文句を言いません。与えられた環境で、生きられるだけ生きて、一生を終えるのです。
僕たちは、その動物らしい一生を全うさせるために何ができるのかを、常に考え続けています。それが、飼育下にある動物たちのいのちに対する責任だと思うからです。


P104
「自然を守る」という言葉には、「自分たちは自然のなかにいない」という意識が見え隠れしているように感じます。私たち人間も、自然のなかに生きているのです。同じ空気を吸い、同じ太陽の光を浴びているのです。


P106
エゾオオカミを絶滅させたのも、エゾシカの増加による農林業の食害問題などに頭を悩ませているのも、私たち人間です。また、エゾシカを、自らの生活の場である森さえも破壊してしまう”モンスター”に化けさせたのも、人間に原因があるのです。


P180
当園では”害獣”と呼ばれるエゾシカやカラスも展示しています。絶滅危惧種を守るということは、その生態系の頂点にはない”普通の生き物”も同時に守ることなのです。
自然界では、食物連鎖という形でいのちが循環しています。
「守るべきものは何なのか?」
「自然と共に生きるとは、どういいうことなのか?」
決して、絶滅危惧種だから価値があるわけではありません。皆、等しく素晴らしい存在であり、その価値に差はないのです。そもそも、害獣という捉え方自体、人間がつくり出した観念です。問題の根本は、すべて私たちの生き方、価値の定め方にあるのです。


P204
動物たちは、どんなに追い込まれても、決して人を排除しようとはしません。彼らはヒトと距離を保とうとして、身を引くのです。そして、引く場がなくなり畑へ出てしまうと”害獣”として扱われてしまうのです。


P230
「節電、節電」と叫ばれるなか、熱中症が心配だとか、仕事の効率が下がるとか、マイナス要素ばかりが取り上げられているように感じます。
「今年は”節電の夏を楽しむ年”にしましょう!」くらいの、前向きな発想があっていいのではないかと考えてしまいます。
夏を克服ではなく、”夏とともに”です。


P251
野生種の動物は、他種との物理的な距離、心理的な距離を絶妙なバランスで保っています。
「他種を信頼することはないけれど、存在は認め合う」
食べる、食べられるという関係にある種同士が、空間を共有できる素晴らしい能力です。


P280
動物は、自分の暮す環境が次代に託せるものであると判断しないと、繁殖してくれません。僕たちは、狭いながらも、その動物らしく暮せるようにと工夫し続けています。動物が繁殖して子育てをしてくれること。それは、その環境を認めてくれた証しです。ですから、ぼくたちは飼育動物の繁殖を目指すのです。そのことが、来園者に生き生きと輝くいのちを感じてもらうことにつながります。


P282
地球といういのちのなかに生きる僕たちは、地球が病んでいては幸せにはなれません。地球で暮らすことに幸せを感じる感性、そのことを豊かに感じる心、すべてのいのちがつながっていることを大切にする気持ち--そんな心のありように気づき、育める動物園にしていきたいと思います。地球の健康と、私たち人間の幸せに貢献できるような動物園のあり方を、これからも模索していきます。

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posted by わけい at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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