2017年05月05日

スクラップ・アンド・ビルド(羽田 圭介)

又吉さんの「火花」と同時の芥川賞受賞作品。
祖父の介護を通しての色んなことを考える青春小説。





印象に残った個所を引用
給与に比して仕事のきつい介護業界では、大輔のように四年以上の職歴がある男性の人材は、貴重らしい。そういう人たちは総じて、共働きしてくれる甲斐性のある女と一緒に生活している場合が多く、つまりはモテる男にしか長く務まらない仕事なのだと大輔が以前冗談半分にもらしていた。


柔らかくて甘いおやつという目先の欲望に執着する人だからこそ、目先の苦痛から逃れるため死にたいと願うのだ。


「足も腕も痛くてからねえ」祖父がさする箇所の半分以上は、関節等ではなく筋肉の部分だ。健斗もここのところ、全身のあらゆるところに筋肉痛がある。現役世代の健斗にとって痛みとは炎症や危険を知らせる信号であり、筋肉の痛みに関していえば超回復をともなったさらなる成長の約束そのものである。つまり、後遺症や後々の不具合がないとわかれば苦なく我慢できる。しかし祖父にとっては違う。痛みを痛みとして、それ自体としてしかとらえることができない。不断に痛みの信号を受け続けてしまえば、人間的思考が欠如し、裏を読むこともできなくなるのか。だからこそ痛みを誤魔化すための薬を山のように飲み、薬という毒で本質的に身体を蝕むことも厭わない。心身の健康を保つために必要な運動も、疲労という表面的苦しさのみで忌避してしまう。


つまり健斗が今いくら、W急降下W鍛錬をしても、半世紀も生きれば祖父のような肉体ならびにそれに伴う堕落した精神になってしまう事実を見せつけられているようなのだ。見ているだけで未来の自分を馬鹿にされるようで、だから孫に威厳を示すためにも、祖父にせめて有終の美を飾ってほしいと健斗は思う。


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posted by わけい at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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