目次
第1部 「箱」という名の自己欺瞞の世界(「君には問題がある」
自分だけが気づいていないこと
何も見えない状態に陥るとき ほか)
第2部 人はどのようにして箱に入るか(箱に入っているのは、あなた一人じゃない
箱の中に押し戻されてしまうとき
あなたを箱の中に追い込む「自分への裏切り」 ほか)
第3部 箱からどのようにして出るか(「素直な自分」を引き出す
「どうすれば箱の中から出られるか」
人として、相手と接する ほか)
印象に残った個所を引用
我々がこの世で受ける苦しみは、それぞれが脈絡なく発生しているようでいて、実は複雑にからみあった糸のように相互に影響しあっていることが多いのですね。
そして、その根本の原因を作り出している発生源が、他ならぬ自分自身のものの見方であることが人生においては存外に多いのかもしれません。
P75
人はまず、相手の行動にではなく、相手のありよう、つまり相手が自分に対して箱の中にいるか外にいるかに対して反応するんだから
P145
自分の感情に背いていると、自分を正当化するような見方で自分自身を見るようになる。そしてそのイメージを、状況が変わっても持ち続ける。だから状況が変わっても、相変わらず箱の中に入っているわけ。人を人としてまっすぐに見られず、自分で作り出した自己正当化イメージを通してしか見られなくなっているの。相手がその自己正当化イメージを脅かすような動きをすると、脅威だと感じるし、自己正当化イメージを強化してくれる人々のことは、味方だと感じる。そのイメージにとってどうでもいい人々のことは、どうでもいいと見なす。どう見るにせよ、相手は単なる物であって、自分自身はすでに箱の中に入っている。
P148
「ああなるほど、わかりました。自分は物知りだというイメージを持っているからこそ、わたしは物知りになれないんだ」
「そうなんだ。自分は何でも知っているという自己正当化イメージを持っている人は、ほんとうに、いろいろなことを知りたいと思っているんだろうか」
「違いますね。自分がどう見えるか、それが最大の関心事なんじやありませんか」
「その通り。自己正当化イメージというのは、そういうものなんだ」
P153
「(前略)たがいの人間は自己正当化ィメージを持ち歩いていて、攻撃されたらすぐさま自己正当化イメージを守ろうと、はじめから防御の構えに入っている。じゃあ、箱の中にいるわたしが相手を責めたとき、相手はどう出るだろう」
「責められれば、すぐに箱の中に入るでしょうね」
「その通り」
P159
ときには、子どもを厳しく躾けることも必要よ。でも、わたしが息子を蟻けようとしたのは、息子に躾が必要だったからじゃない。息子に生活をめちゃくちゃにされたと思って、頭にきて、躾ていたの。躾けているあいだもそれ以外のときも、わたしは箱の中に入り続けていた。息子を、手を貸してあげるべき人間としてではなく、叱る対象としてしか見ていなかった。息子はそれを感じて、反発していたの。
P165
「別に、箱の中にいれば問題が楽しくなる、というわけじゃない。
それどころか、問題を憎む。箱の中にいるときには、箱から出ることが一番の望みのように思える。でもいいかい、箱の中にいると自分を裏切ってしまう。自分や周りの人たちを、ありのままに見ることができなくなる。そして、望む結果を得ようという自分の努力を、箱そのものが餓がでいるということすら、見えなくなってしまう。(後略)」
P167
自分への裏切り
1 自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を、自分への裏切りと呼ぶ。
2 いったん自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。
3 周りの世界を自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る目がゆがめられる。
4 したがって、人は自分の感情に背いたときに、箱に入る。
5 ときが経つにつれ、いくつかの箱を自分の性格と見なすようになり、それを持ち歩くようになる。
6 自分が箱の中にいることによって、他の人たちをも箱の中に入れてしまう。
7 箱の中にいると、互いに相手を手ひどく扱い、互いに自分を正当化する。共謀して、互いに箱の中にいる口実を与えあう。
P220
箱の中にいるときに、しても無駄なこと
1 相手を変えようとすること
2 相手と全力で張り合うこと
3 その状況から離れること
4 コミュニケーションを取ろうとすること
5 新しいテクニックを使おうとすること
6 自分の行動を変えようとすること
P221
「自分のことを考え続けている限り、箱の外には出られない。箱の中に入っているときは、たとえ自分の行動を変えようとしたところで、結局、考えているのは自分のことでしかない。だから、行動を変えても駄目なんだ」
P224
「そう。つまり、自分がどうやって箱から出たのかを理解しようとしても、なかなかうまくいかないのは、箱から出るためにどう行動すればいいのか、その行動を突き止めようとしているせいじゃないかな。箱そのものが行動より深いところにあるわけだから、箱から出る方法も、行動より深いところにあるはずだ。箱の中にいようが外にいようが、外見上同じことができるということは、逆から見れば、行動だけでは箱の外に出ることはできない、ということでもある。探す場所を間違えているんだ」
P228
「相手に逆らうのをやめた瞬間に、箱の外に出ることができる。自分を正当化しようという考えや感情から解き放たれる。だから、箱から出る方法は、常にわたしたちの目の前にあるということになる。だって、自分が抵抗している相手は目の前にいるんだからね。相手に対する自分の感情に背くのをやめて、相手に抵抗するのをやめることは、可能だ」
P238
「それなら箱の中にいる人間が、どれほど不安定な状態で暮らしているかも、わかっていると思う。なんとしても白分を正当化しなくてはならない。
自分は思慮深い人間だとか、価値ある人間だとか、高貴な人間だとか、しじゆう自分の徳を見せつけていなくてはならないのだから、これは大変だ。
実際、手に余るという点では、他の人に対してすべきことよりも、箱の中で自分を証明してみせることのほうが、よほど手に余るんじゃないかな。
これまでの生活を振り返ってみれば、君だって思い当たることはあるだろう。
箱の外にいるときよりも、箱の中にいるときのほうが、はるかにしなければならないことが多く、負担が大きいと感じていたはずだ。
たとえば、昨日の晩と、君が奥さんたちと過ごしたそれまでの晩を比べてみてもいい」
たしかにそうだった。
昨晩、わたしは久しぶりで家族のためにいろいろなことをした。にもかかわらず、これほど
くつろげたことはないと感じていたのだ。
P265
知ったことに即して生きること
◇ 完壁であろうと思うな。よりよくなろうと思え。
◇ すでにそのことを知っている人以外には、箱などの言葉を使うな。自分自身の生活に、この原則を活かせ。
◇ 他の人々の箱を見つけようとするのではなく、自分の箱を探せ。
◇ 箱の中に入っているといって他人を責めるな。自分自身が箱の外に留まるようにしろ。
◇ 自分が箱の中にいることがわかっても、あきらめるな。努力を続けろ。
◇ 自分が箱の中にいた場合、箱の中にいたということを否定するな。謝ったうえで、更に前に進め。これから先、もっと他の人の役に立つよう努力をしろ。
◇ 他の人が間違ったことをしているという点に注目するのではなく、どのような正しいことをすればその人に手を貸せるかを、よく考えろ。
◇ 他の人々が手を貸してくれるかどうかを気に病むのはやめろ。自分が他の人に力を貸せているかどうかに気をつけろ。


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